#23 えびはマスト

先日、弟が学校で献血をしてきた。

 

学校によく来ますよね、献血カー。若い血が欲しいのでしょう。昔、父が献血に行って来た時に、

 

「卵1パックもらったぞ〜!ガハハ!」

 

と自信満々に帰って来たことを今でも覚えている。献血をすると色々ともらえるのだ。

 

弟も献血をしてお菓子をもらって来た。ブルボンのプチシリーズ。

 

「こちらからえび味が1つと、あとお好きな味を2つお持ち帰りください」

 

と、言われてもらってきたらしい。

 

 

弟はふと、献血カーの前に置いてある立て看板を見た。

 

 

「お好きなお菓子を3つ選んでください」

 

しかし、お姉さんには

 

「えび味が1つとお好きな味2つ」

 

と言われた。

 

 

 

 

 

なんでだ。

 

 

「お好きな味3つ」って書いてあるじゃないか。

 

弟曰く、えび味が大量に余っていたらしい。

 

焦ったのだろう。このままでは

 

 

「お好きなえび味3つお選びください」

 

 

になってしまうのではないのか、と。

 

えび味をなんとか消費しなければならない。だったらお好きな味3つにねじ込めばいいじゃない。えび、好きでしょ?アントワネットもびっくりの、

 

「チョコ味がなければ、えび味を食べればいいじゃなぁ〜い」

 

である。えびをゴリ押ししてくる献血カーも珍しい。

 

 

 

弟は素直で良い子だ。

 

お好きな味3つに、ちゃんとえび味を差し込んできたのだから。

 

私だったらしない。だって「お好きな味3つ」って書いてあるから。もし、えび味を選ばずに持って帰ろうとしたらどうなっていたのだろう。献血カーから慌てて係員の方が出てくる。

 

 

「ちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょお客様!どう!どうどう!」

 

「馬房ですか、ここは。どうしたのですか」

 

「お客様。大変恐縮なのですが、えび味を1つ選んでいただくと助かります」

 

「でもこちらの看板にはお好きな味3つと書いてあります」

 

キュゥ〜〜、キュッ!(油性マジックで修正する音)

 

「えび味が1つ・・・と」

 

「ちょっとちょっと係員のお兄さん、僕えびは選びませんよ」

 

「え?ここにえび味1つと書いてありますよ?」

 

「これが心の大外刈りですか。すごい手の平返しですね」

 

「まぁまぁ!そうおっしゃらずに!えびもクセになりますよ」

 

「血を抜いたあとにえびがクセになるの嫌なんですけど」

 

「ひとりは・・・」

 

「・・・・・・」

 

「みんなのために。みんなは・・・?」

 

「・・・・・・」

 

「ひとりのために!ね?」

 

「え、どうしよう。購買部で鈍器売ってたかな」

 

「ちょちょちょちょお客様!怖いこと言わないでくださいよ!」

 

「いや物理的に血を抜いてもらいたいのかな、と思って」

 

「そ、そうだ!こうしましょう。えびを1つ選んでいただくかわりに、3つ好きな味を選んでいただいて構いません!どうでしょう?」

 

「いや、それだと他の方に不公平じゃないですか」

 

「お客様だけ!内緒で特別ですよ!」

 

「僕は構いませんけど、さらにえび率が高くなりますよ?」

 

「大丈夫です!後でなんとかしますから!」

 

(なんともならないぐらい、えびばかりだが・・・)

 

「じゃあ、お言葉に甘えてえびと・・・あとは、チョコと」

 

「あっ」

 

「ん?」

 

「いや、チョコは・・・」

 

「チョコが何です?」

 

「チョコは・・・今日天気良いし・・・・・・」

 

「チョコと天気の良さに何か関係ありますか?」

 

「溶けるんじゃないかなぁ。チョコは」

 

「大丈夫ですよ、すぐ食べるんで」

 

「いや血糖値とか上がると大変じゃないですか」

 

「友達と分けるので大丈夫です」

 

「友達の血糖値が心配だなぁ」

 

「友達数人で食べますから」

 

「全員心配だ」

 

「え、このお菓子そんなに砂糖入ってます?」

 

「チョコなんで」

 

「普通のチョコの方が砂糖入ってますよ、多分」

 

「血を抜いた後はチョコはおすすめできませんね」

 

「じゃあここにチョコ置いちゃダメじゃないですか」

 

「お、おっしゃる通り!チョコ回収しますね!するとあとは・・・青のり味とごま味とえび味ですね。いやぁ〜今日はえびが大量だなぁ!あ、お客様どこに行かれるんですか?まだえび余ってますよ。お客様!そっちは購買部ですよ、お客様〜〜〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

みんなも献血に行こう。

 

 

 

#22 優先席は君のためにある

私の隣は空いている。

 

私の目の前に座っている男は韓国海苔をパリパリと食べている。その隣に座っているブルーノ・マーズを意識した男は、iPhoneで音楽を聴いている。

 

私の隣は空いている。

 

 

プラスチック板を挟んですぐ左にいる少年は、松葉杖を突いていた。

 

優先席はまばらだが、空いている。

 

 

 

なぜ、座らない。

 

私は二人掛けのシートに座っている。

 

何度でも言うが、私の隣は空いている。

 

プライドの高い男は嫌われるぞ。

 

何度でも言う。まばらだが、優先席も空いている。

 

君のために空いている。

 

なぜ、座らない。

 

 

 

今日は最悪だったんだ。

 

シリーズものの映画を観た。前作を観なくても大丈夫。その言葉を信じて観た。

 

初っ端から話が分からない。知らないキャラばかりが出る。味方が一人、また一人。私の海馬はもう限界。

 

最後は悲惨であった。

 

ポカンと開いた口がふさがらない。そんな最後であった。

 

落ち込んだ気分を取り返そうと、駅ビルの本屋で小説を衝動買いした。

 

電車の待ち時間。ひたすら読んだ。

 

面白い。

 

これは電車に乗っている間も楽しめる。そう思いながら座席で読み始めた時、君が現れた。

 

 

 

「発車まで、あと五分ほどお待ちください」

 

車内アナウンスが流れる。

 

松葉杖を突いた少年は少女と喋っている。

 

ははん。

 

わかったぞ。

 

好きなんだな、その子が。

 

その子と喋りたいから、我慢して立っているんだな。

 

そんな君を、彼女はかっこいいと思っているだろうか。

 

わからない。心の内が。

 

一つだけわかっているのは、少女が少年と喋るのをやめて、友達と喋り始めてしまったことだけ。

 

フラれているじゃないか。

 

私の隣は空いている。

 

 

 

体がわずかに揺れる。

 

車窓から見える景色が、少しずつ、流れていく。

 

少年の体も揺れる。私より。

 

優先席はすべて埋まってしまった。

 

だから言ったじゃないか。私の隣は空いている、と。

 

心の中で。

 

あの子は君を見向きもしない。

 

一所懸命立っている君を。

 

そうでもなかった。ドアに寄りかかっていた。

 

やるな。その手があったな。

 

私もよく使うんだ、その手は。でも、今日は座っている。集中して小説を読みたかったから。

 

君のせいであまり集中できていないが。

 

 

 

ふと、少女が私の前に来る。

 

身構える。膝が震えた。

 

私の前を横切り、私の隣にあるボックス席に寄る。

 

友達が座っているのだろう。私の斜め前で、ボックス席に寄りかかりながら、立ち話を始めた。

 

彼女の肩にかかったピンクのナップサックが、私の膝に擦れている。

 

擦れてますよ、お嬢さん。

 

 

 

向こうから、女性の車掌が歩いてくる。

 

目が合う。

 

彼女の瞳孔が、ほんの少し、開いたように感じた。

 

私を見て、次に松葉杖の少年を見た。

 

発車してから、何分経っただろうか。

 

優先席は、今はまばらに空いている。

 

空いているんですよ、車掌さん。

 

もっと言えば、私の隣も空いている。

 

優先席は空いているんだ。

 

優先席は空いていますよ、と言わないあんたも悪い。

 

お客様に向かってお辞儀をしてからこの車両を出る律儀さがあるのなら、なぜ少年には語りかけないのか。

 

大丈夫ですか、と。

 

こいつのここ空いてますよ、と。

 

言葉づかいは多目に見よう。

 

 

 

もうすぐ私の駅に着く。

 

小説に栞を挟み、バッグにしまう。

 

私の目の前にいる韓国海苔の男は、首がだらんと下を向いている。隣のブルーノ・マーズも下を向いている。

 

この二人が降りてくれれば。そう思っていた。

 

もう韓国海苔は食べないし、ブルーノ・マーズも聴かない。今後一週間は。

 

私の隣にいる少年は、ずっと立っていた。

 

私は、もう降りる。君はどうする。

 

少年は、リュックサックを背負い直した。

 

ここか。

 

君もここなのか。奇遇だな。私もだ。

 

すまなかった。情けない大人で。

 

どこかで。誰かが。期待して、期待して。

 

何も変わらなかった。

 

君が座ろうが、座るまいが、どうでもよかったじゃないか。

 

変な空気になったら、車両を出ればいいじゃないか。

 

なんで私が?

 

プライドが高いのは私じゃないか。

 

 

 

 

ガタン。

 

夜風が、頬に吹きつける。

 

私の斜め前にいた少女も降りるようだ。

 

少年と少女が降りるのを見てから、私も降りる。

 

少年はまた少女に話しかけながら、松葉杖を突いて歩く。

 

うまくいけばいいですね、と。

 

車窓に目を向けると、スマホを見ている人が多い。

 

みんな下を向いている。

 

さあ、帰ろう。

 

前を向くと、最後尾の窓から顔を出す車窓さんと目が合う。

 

また、合いましたね。

 

少し睨めたような、寒そうな、そんな目で。

 

 

 

 

私の隣はずっと空いていた。

 

 

 

#21 大人の成人式

先ほどラジオで「2分の1成人式」というキーワードが出てきた。

 

成人式は20歳を迎える人を祝う儀式だ。2分の1成人式はその半分、10歳を迎える人を祝う儀式。この2分の1成人式の存在はつい最近知った。ウィキで調べたらこの行事はだいぶ前からあったのですね。私が小学生の時にはありませんでした。

 

 

10歳は「2分の1成人式」、20歳は「成人式」。

 

では30歳は?

 

 

10歳も、20歳もイベントがあるのに、30歳に何もないのはさみしい。あってもいいんじゃないか、30歳の成人式。

 

 

 

 

いや、すでに成人だな。

 

 

 

年齢を祝うだけでは物足りない。2分の1成人式では合唱や親への感謝の手紙、成人式では眠い式典と鏡割りとウェ〜イ。30歳の成人式では、今まで自分が挑戦してこなかったことをやってみる、というのはどうだろう。

 

 

私が挑戦してこなかった事といえば、バンジージャンプですかね。テレビで一般の方や芸能人がやるのを見るだけで、やったことはない。どうせだったら晴れ着を着てバンジージャンプをする。ついでに鏡割りもする。さらに「ウェ〜イ!」もする。

 

 

「レッツ、バンジ〜!」

 

ヒュルルルルルルルォ〜・・・

 

カッコーン!

 

 

「ウェ〜〜〜〜イ!」

 

 

ブチッ。

 

 

「あっ・・・・・・」

 

 

 

 

 

今日は地元で成人式があるそうです。新成人のみなさま、おめでとうございます。あまりハッチャけ過ぎないようにね。

 

 

 

#20 ありがとうボタン

お疲れ様です。イヌイです。

 

 

 

先日、友人とドライブしていた時のこと。ウィンカーをカッチコッチあげながら、道路に割り込みたい車がいた。よくある光景。

 

私の友人は優しい。それはそれはとても優しい心を持った友人である。どのぐらい優しいかというと、お弁当を忘れた私にコッペパンを半分分けようとしたものの、うまく半分にできずに6:4ぐらいの比率になっちゃって、はにかみながら4のコッペパンをくれる・・・そんな友人。

 

 

そんな私の友人は快く道を譲った。なぜなら優しいから。私に4のコッペパンをくれるその優しさで、彼は道を譲ったのだ。

 

するとどうだろう。

 

 

譲ってもらった車は無反応。当然のように割り込んできた。

 

それを見て友人はぽつり、

 

 

「なんか手ぇ挙げるとかハザードランプ点けるとか挨拶しろよ」

 

 

と、言った。

 

 

 

 

 

心せっま。

 

 

 

人間とは不思議な生き物だ。

 

私は優しいから、私は心が広いからと言っておきながら、感謝や見返りがないと怒りがこみ上げてくるのだ。だったら最初から優しい対応をしなければいい。でも、それで「心が狭い」なんて言われると、これまた怒りがこみ上げてくる。面倒くさい。

 

 

みなさんは道を譲ってもらった時、どのような挨拶をしますか。大体3パターンくらいじゃなかろうか。ハザードランプ、手を挙げる、会釈するの3つ。

 

 

 

この3パターンが面倒だから、みんな挨拶をおろそかにするのではないか。もっと簡単に。端的に。フレンドリーに。そうするには、「ありがとうボタン」をつければいい。ハンドルのあたりに。

 

「ありがとうボタン」を押せば、運転者に代わって車体の外部に取り付けられたスピーカーから「ありがとう」の音声が流れる。天龍源一郎さんみたいな声で、半径30メートル圏内に響き渡る。でかいし聞き取りづらい。でも、挨拶でいちいち気を遣う必要がなくなるのだ。

 

 

 

 

道を譲ってもらったら「ありがとうボタン」

 

あっちでもこっちでも「ありがとう」、「ありがとう」のファンファーレ。道を譲った方も気持ちが良くなって、つい窓から顔を出して

 

 

「いい薬です!」

 

 

と、叫ぶかもしれない。そもそも窓から顔を出してはいけない。危ないから。

 

 

 

 

なんでもかんでも「ありがとう」を求める日本人は面倒くさいなぁ。

 

 

 

 

#19 道の駅米沢に行ってきた。

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お疲れ様です。イヌイです。

 

今日、道の駅米沢に行ってきました。先週の4月20日にオープンしたばかりの道の駅。平日にもかかわらず、たくさんのお客さんで賑わっていました。

 

道の駅内は木のいい香りが。物販コーナーでは米沢の特産物や農家さんの野菜がたくさんあります。

 

 

 

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物販コーナーの向かい側にあった日本酒コーナー。山形の日本酒がズラリとあります。「スイカのお酒」なんてのもありましたよ。

 

軽食コーナーでは大人の方が座れる席以外に、小さい子供用の机もあって面白かったですね。フードコートでは米沢ラーメンや米沢牛を使用した料理が食べられます。フードコートはもう少し広くてもよかったかな、という印象です。天気が良ければ道の駅の外にもテラス席があるので、そこでも休憩できます。

 

 

 

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フードコートのゴミ箱。なぜか上には拡声器が置いてありました。番号で呼んでも取りに来ないお客様用でしょうか。静かな怒りを感じます。

 

 

 

 

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最後にソフトクリームを食べてきました。米沢りんごソフトクリーム。白く普通のソフトクリームに見えますが、食べると甘酸っぱいりんごの酸味、甘み、知覚過敏、とても美味しいです。

 

 

ゴールデンウィークに足を運んでみてはいかがでしょうか。

 

 

#18 エグモント・ホイスコーレン

お疲れ様です。イヌイです。

 

昨日から山形県南陽市デンマークから修学旅行生が来日している。

 

デンマークには「フォルケホイスコーレ」という成人教育機関が約70校ほどあるのだが、今回来日しているのはその内のひとつ、「エグモント・ホイスコーレン」。「エグモント・ホイスコーレン」の特徴は障害者と健常者が寝食を共にしながら学んでいくところだ。

 

 

先ほど、この「エグモント・ホイスコーレン」の事を母に話したら、母が中学生の時は障害者と健常者が同じ教室で学んでいたらしい。私が小・中学校の時はすでに「特別学級」として障害者と健常者が分かれて学んでいたので、今の子供たちが母の話を聞いたらどう思うだろうか。

 

 

障害者に対して「どう接すればいいか分からない」という人たちは多いだろう。正直、私もその内の一人だ。ただ、子供の頃から障害者と健常者が互いに触れ合う経験があるのとないのとでは、社会に出た時に考え方や生き方が変わってくるのではないか。教育課程でそういう経験がもっとあってもいいんじゃないかな、と思う。

 

 

 

エグモント・ホイスコーレンの修学旅行生一行は14日まで南陽市に滞在する。ワイナリー見学や赤湯温泉街の散策、パラグライダーの体験などをするそうだ。南陽市の方々とたくさん触れ合って、存分に楽しんでいってもらいたい。

 

 

 

#17 とびこみ食堂

お疲れ様です。イヌイです。

 

 

ヒルナンデスで「ローカル路線ぶらり旅」という企画がある。各地のローカル路線に乗り、各駅でご当地グルメを探す旅。

 

今日放送されたのは東武鬼怒川線の完結編。その道中、地元の人たちの紹介で「とびこみ食堂」というお店が出てきた。その名の由来は、お店によく車が「飛び込む」から。お店の場所が国道の直角にあたるため、カーブを曲がりきれずにお店に飛び込む車が多いのだそうだ。

 

 

 

この話で思い出したのが、セブンイレブンの車飛び込み事件。セブンイレブンは増加している車の飛び込み被害を受けて、犬走りにガードパイプを設置している。

 

 

このガードパイプがあるにもかかわらず、お店に突っ込んだ車があった。その車はなんとお店の入り口に突っ込んだのだ。

 

 

パイプを設置していない食堂も、設置しているコンビニも、結局車が突っ込んできた。お店側はどう対処すればよかったのか。私の結論は、

 

 

 

 

 

 

 

 

お店を二階建てにすればいい。

 

 

 

 

一階は車が突っ込んでいいように空洞にしておけば、二階にあるお店に被害は出ない。何台突っ込んでも大丈夫。むしろ停めるのが面倒だから突っ込む車が増えるかもしれない。異様な光景である。

 

 

 

車の運転には気をつけよう。